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三ツ星大学★★★ワイン編(2限目)

至高のグルメ講座『三ツ星大学★★★』

東広島が世界に誇る食の探究者が贈る至高のグルメ講座『三ツ星大学』、今回のテーマは歴史と伝統ある「ワイン」です!
前回の「香り」に続く今日のテーマは「日本ワイン」。少量ながら試飲もあるということで、参加者の期待も膨らみますv
講師は酒類総合研究所の理事長で、日本ブドウ・ワイン学会の会長も務められる後藤奈美さんです。

2限目◆2月20日(土)『人気急上昇!日本ワイン登場!』

後藤:「まず最初に質問です。『日本ワイン』という言葉をご存じですか?」
挙手したのは…数名? それも仕方ないかもしれませんね、実はこの「日本ワイン」は2年ほど前(平成30年10月30日)から始まったラベル表示です。
でもどうして「国産ワイン」だけではダメだったのでしょうか。

1. 日本ワインの定義
「国産ワイン」…日本国内で醸造(製造)されたワイン。なので原料は海外で生産されたブドウ(果汁含む)でもOK。
「日本ワイン」…国内で生産されたブドウを原料に用いて、国内で醸造(製造)するワインのみ。

ワインの市場が広がる中で、ブランド力の向上、産地偽装防止などの観点から、より丁寧に(厳密に)ワインの生産情報を伝えるための規制がこの「日本ワイン」の表示ルールです。
「日本ワイン」の基準が明確化されたことで、消費者も迷うことがなくなり、よりはっきりと対象のワインを意識するようになりました。生産者もそれに応えるかたちで日本ワインの品質がどんどん向上しています。

2.日本固有の品種

日本ワインの代表的な品種は白ワイン用の「甲州」と赤ワイン用の「マスカット・ベーリーA」。この2種類はワイン用ブドウ品種として国際的に認められた世界に誇る日本固有品種です。
「甲州」
日本で一番使われている白ワインの品種で、江戸時代から栽培されていた記録が残っています。
さらにそのルーツを酒類総合研究所のDNA解析で辿ってみると、ヨーロッパ系ブドウ品種「V.vinifera」が野生ブドウと交配を繰り返しながらシルクロードを渡って日本に入ってきた道筋が見えてきます。
(試飲)
実はこのワインには前回「中学生の汗」と表現されてしまった「3MH」が含まれているのですが、不思議ですね、他の香りと一緒になることで全体としては華やかな香りへと変化しています。「柑橘系のフルーティな香り」、「酸味が程よく効いておいしい」、「甘口じゃないけど味のふくらみがある」。参加者のみなさんもソムリエっぽくなってきました!

「マスカット・ベーリーA」
雨の多い日本の気候でも育つアメリカ系品種をヨーロッパ系品種に掛け合わて誕生した品種です。今から90年近く前に、日本のワインブドウの父と呼ばれる川上善兵衛さんが、周囲の非難も顧みず私財を投げうって品種改良に情熱を注ぎ、10,000株の中から品種選抜されたのがこの「マスカット・ベーリーA」です。試飲は感謝の気持ちを添えて…
(試飲)
この品種の一番の特徴は「綿あめのような甘い香り」です。
「本当ですね、甘い香りがします。まるでイチゴみたい!」、「デザートワインみたいに甘い」、「渋みがライトでおいしいですね」。日本人が自分たちの味覚に合うように開発した品種だけあって、みなさんも絶賛されていました!(本当に美味しい!)

3.日本ワインの特徴

●栽培品種が多い
伝統に縛られていないため、多くの品種が作られ様々なテイストのワインが楽しめます。
●不利な環境を克服する栽培方法や醸造方法
ブドウ1房1房に傘をかけて多雨に耐えたり、棚仕立てや垣根仕立てなどで誘引の工夫をしたりしています。一つ一つ手摘みで収穫するのも日本人らしい丁寧な栽培ですね。
●繊細な味わい
日本人らしい繊細な味わいが魅力です。和食に合う穏やかな味も欧州ワインにはない日本ワインの大きな特徴です。
●生産者に近い
日本で作っているからこそ身近に醸造所があるため、生産者の情報が消費者へ届きやすくなり、作り手の顔やこだわりを伝えやすい。

皆様もお気に入りのワインを見つけて、一度ワイナリーを訪ねてみてはいかがでしょうか。

4.質疑応答

Q 国内ワイン醸造所の「特区」って何ですか?
A 「特区」は、町おこしなどを目的として、法律が定める通常の最低製造数量以下でも製造免許の取得が認められる地域のことです。

Q 日本ではヨーロッパ系の品種を作ることがありますが、逆にヨーロッパで他国の品種を作ることはありますか?
A 欧州の伝統的なワイン産地はブランド(品種、栽培エリア等)をとても大切にするため、新しい品種を栽培することはまずありません。

Q フランス、イタリアでワイン消費がすごく落ちている理由は?
A ランチ時の飲酒が減っています、飲酒運転の取り締まりが強化されたのも影響しているかもしれません。また、欧州にとっての「ワイン」、日本の「清酒」やドイツの「ビール」など伝統的なお酒をどこかネガティブに捉える(例えば欧州の若い世代は、ワイン=年齢層が高い人が好む酒と捉えている)傾向があるようにも感じます。

Q 世界における日本ワインの評価は?
A 量も少ないため、まだ広くは認知されていませんが、それでも甲州をはじめ日本固有の品種が注目を集めています。国際的な賞を取るようなワインも少しずつ出てきていますよ。

そして会場での履修者には「修了書」を授与させていただきました!皆様、おめでとうございます。

開催概要

テーマ三ツ星大学【ワイン編】
日時2021年02月20日(土) 14:00~16:00
場所東広島イノベーションラボ ミライノ+
(YouTubeリアルタイム配信実施済)
定員会場 10名/YouTube 制限なし
講師独立行政法人酒類総合研究所
理事長 後藤奈美
昭和58年 国税庁入庁。平成3年から1年間、ボルドー大学に留学。
主に醸造試験所(現在は独立行政法人酒類総合研究所)で赤ワインの色や甲州のルーツの解明など、ワインの研究に従事し、平成28年から現職。
三ツ星大学学長/ナビゲーター広島大学名誉教授/(一社)ショコラミル-インターナショナル代表理事 
佐藤清隆
広島大学生物生産学部で食品物理学の教鞭を執り、2010年に退官。同大学名誉教授でチョコレート研究の第一人者。
現在でもチョコレートを含む油脂の構造と物性の分野において、国内外の様々なステークホルダーと共同研究を推進中。
申込みについて

参加・視聴、ありがとうございました。

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