【円陣インタビュー】子どもたちの笑顔のために「心の底から笑顔」の親を増やす

~子どもたちの笑顔のために「心の底から笑顔」の親を増やす〜
東広島市で行われている「円陣2025」は、社会課題をビジネスの手法で解決することを目指す、共創型の起業プログラムです。行政、企業、市民など多様な立場の人が「円陣」を組み、それぞれの強みを持ち寄りながら、地域の課題に仲間と挑戦していきます。想いのあるプレイヤーを中心に、伴走者やサポーターが関わりながら、事業アイデアを磨き上げ、地域での実践につなげていくことを目指しています。
本記事では、プレイヤーの上条厚子さんを紹介します。上条さんは、名古屋を中心に「親のがっこう」代表として活動しています。「親のがっこう」は、出産を迎える夫婦が「ふたりで子育てを始める準備」ができるよう、学びの場を提供する取り組みです。妊娠期から夫婦でしっかり話し合い、支え合える土台をつくることを大切にしています。
現在、上条さんは円陣の場で、行政や企業と手を取り合い、地域ぐるみで子育てを応援する“全国初の官民共創モデル”づくりに挑戦しています。産前教育をまちの仕組みの中に自然に組み込み、必要な家庭へ確実に届ける仕組みを模索しています。

1. 「子育てがしんどい」という、暗闇の中にいたあの頃
上条厚子さんがこの活動を始めた背景には、ご自身の切実な体験があります。現在、高校3年生と中学1年生の二人の娘さんを育てる上条さんですが、今から11年前、長女が7歳、次女が2歳の時に「産後うつ」と診断されました。
「子どもはかわいいはずなのに、なぜこんなにしんどいんだろう」
そんな理想と現実の間で、孤独感に押しつぶされそうになった日々。その経験こそが、現在の活動の原動力となっています。2016年に「自分らしく子育てできる人を増やしたい」と起業し、のべ2万人以上の親子の悩みと向き合ってきた上条さん。彼女がたどり着いた答えは、「困ってから助けるのではなく、困らないための準備を届ける」ことでした。

2. なぜ「産前」に学ぶことが、こんなに難しいのか?
上条さんは、「産後のつらさは、産前からの『予防』で防ぐことができる」と断言します。しかし、そこには一つの大きな壁がありました。妊娠中の夫婦はまだ育児が始まっていないため、「将来自分たちが困るかもしれない」という必要性に気づきにくいという点です。
「自分たちは大丈夫」と楽観的に考えてしまいがちな時期だからこそ、自ら申し込まなくても自然に学びの機会にアクセスできる「仕組み」が必要です。企業向けの両親学級では、パパたちの意識が劇的に変わる様子を目の当たりにしてきました。「子育ての主担当が妻一人では無理だ!と衝撃を受けた」というパパや、「夫が『手伝う』から『一緒にやる』に変わった」というママたちの声が、その効果を証明しています。この「予防教育」を、一部の意識が高い人だけでなく、すべての人に届けたい。その想いが上条さんを動かしています。

3. 東広島の「円陣」で見つけた、同じ志を持つ仲間たち
そんな上条さんと東広島市が出会ったのは、2025年7月のことでした。東広島イノベーションラボミライノ⁺での講演で、東広島の温かい人たちと出会ったのがきっかけでした。「子育てで悩む親の力になりたい」という同じ熱意を持つ人たちに触れ、上条さんは「名古屋やオンラインで培ってきたこの仕組みを、ぜひ東広島でも広めたい!」と強く感じ、起業家支援プロジェクト「円陣」への参加を決めました。
実際に参加してみると、東広島市の子ども家庭課や産業振興課といった行政の皆さんが、この想いに深く賛同し、力強いサポートをしてくれたのです。行政、企業、そして熱い志を持つサポーターたちが手を取り合う「円陣」だからこそ、一人では成し遂げられない大きな変化を生み出せると確信しています。


4. 実証実験スタート!東広島の「パパママ教室」が変わる
現在、上条さんは円陣での挑戦として、具体的な一歩を踏み出しています。それが、東広島市が主催する「パパママ教室」の中に、親のがっこうの講義を取り入れる実証実験です。
これは、行政の窓口という「誰もが訪れる場所」で専門的な産前教育を提供する、全国的にも珍しい「官民共創モデル」への挑戦です。自治体のリソースと民間のノウハウを掛け合わせることで、これまで届きにくかった「予防教育」を、東広島のすべての家庭に届けるためのインフラ作りが、今まさに進められています。2025年9月から始まったこの取り組みは、東広島から日本全国の子育てのあり方を変えていく、希望の光になるかもしれません。

5. 2026年3月8日、円陣報告会にて「奮闘賞」を受賞!
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こうした東広島市での「共創」の取り組みが結実し、2026年3月8日、上条さんはプログラム内で最も「円陣」の仕組みを積極的に活用したチームに贈られる「奮闘賞」を受賞しました。
2026年4月からは実証実験を経て本格的な運用がスタートします。現在は秋田市でも展開準備が進んでおり、予算や人手不足といった自治体の課題を解決しながら、子育て家庭を笑顔にする「親のがっこう」の挑戦は全国へ広がっています。

